シクロデキストリン。聞きなれない名前ですが、簡単にいってしまえばデンプンの仲間で、自然界にはごくふつうに存在しています。
シクロデキストリンが発見されたのはおよそ100年前のこと。1976年、日本が初めて一部の工業化に成功。2000年になってようやくドイツの化学会社のアメリカ工場で大量生産が可能になりました。原料はとうもろこしのデンプン。ある酵素を作用させることで生成されます。
シクロデキストリンの最大の特徴は、糖の分子が丸くつながり、真ん中に穴が開いていること。この穴の機能に世界中の研究者が飛びつきました。シクロデキストリンは穴の中に有機物を取り込んだり、放出したりする物理的な性質があったのです。この穴を利用するためのさまざまなアイディアが出されました。何を取り込むのかによって様々な効果効能をもたらす魔法の糖とも呼ばれた原料シクロデキストリン。そのチカラに迫ります。
シクロデキストリンの正体
シクロデキストリンの性質は、私たちの身近な食品や生活用品に利用されています。
例えばチューブ入りの練りわさび。本来はすぐに揮発してなくなってします辛味や香りの成分を閉じ込めるのに、シクロデキストリンが使われています。
他にも、シクロデキストリンは食品の苦味成分や、香りも封じ込めることが出来ます。
シクロデキストリンは10億分の1の世界で活躍する、世界で一番小さいナノカプセルだったのです。
シクロデキストリンはブドウ糖がつながったデンプンの一種。ブドウ糖が2-10個つながったものをオリゴ糖と呼び、シクロデキストリンはそのブドウ糖が環状につながっています。そのため、環状オリゴ糖とも呼ばれています。
株式会社シクロケムは兵庫県神戸市にある、日本で唯一シクロデキストリンの研究、開発、販売をおこなっている会社です。現在工業生産されているのは糖が6個つながったα-シクロデキストリン、糖が7個つながったβ―シクロデキストリン、糖が8個つながったγ-シクロデキストリンの三種類です。シクロデキストリンは中が空洞になったバケツのような構造。穴の大きさがα、β、γでちがっています。この穴に物を取り込み、とどまらせ、放出する。一見すると単純に思われるシクロデキストリンの性質ですが、実はこれが様々な効果効能をもたらすのです。包接現象と呼ばれるこの性質は私たちの身近な食品や生活用品に利用されています。
シクロデキストリンの性質(包接現象)



サプリメント原料とシクロデキストリン
シクロデキストリンに取り込む、包接することで機能性が高まることが検証された原料は、コエンザイムQ10、αリポ酸、DHA・EPAなどをはじめ、いくつもあります。東京農工大学の寺尾教授はシクロデキストリンにコエンザイムQ10を包接した効果について、2008年5月、京都で開かれたシクロデキストリンの国際シンポジウムで発表しました。寺尾教授は、研究の結果シクロデキストリンとコエンザイムQ10を包接することで、コエンザイムQ10の吸収性を大きく改善し、その機能性をさらに向上させた体感型Q10に成り得る検証結果を得たのです。
シクロデキストリンにサプリメント原料を包接した効果
コエンザイムQ10の持つ肌の改善効果についての検証試験を、35名の喫煙者を対象に行った結果、摂取期間の経過とともに肌の弾力性が改善されていくのが認められました。また、体の酸化(さびつき)の指標となる8OhdGの喫煙者を試験対象としたデータでは摂取期間の経過とともに8OhdGの量が減り始め、摂取6週間後にはほぼ半減したことから、コエンザイムQ10の体のさびつきを抑える抗酸化作用の効果が顕著に認められました。

コエンザイムQ10とリポ酸をシクロデキストリンに取り込んだ包接体の運動能力向上の実験を高校野球部に所属する生徒を対象に行いました。シクロデキストリンとコエンザイムQ10の包接体を一ヶ月間継続して摂取してもらい、3000メートル走のタイムを計測した結果、摂取1ヶ月後の計測では、およそ30秒タイムの短縮が認められました。この実験で、100年に一度の逸材といわれているコエンザイムQ10の効果効能をさらに引き出すシクロデキストリンの強力なサポートぶりが発揮されたのです。

検証結果からわかるシクロデキストリンの効果
このようにコエンザイムQ10の機能性の大きな向上が見られたのは、シクロデキストリンの効果によるものです。シクロデキストリンとコエンザイムQ10の包接体はコエンザイムQ10単体に比べ、体内への吸収力が向上するため、その効果も向上します。コエンザイムQ10の血中濃度を比較してみるとその効果は明らかです。30mグラムのコエンザイムQ10のみを摂取した場合、6時間後に上昇が見られ、それ以降は下降して、ほぼ平行線をたどります。同じ量のコエンザイムQ10、包接体だと、急激な上昇とそのあともきわめて高い血中濃度を維持することが認められました。
サプリメント原料とシクロデキストリンの相乗効果
摂南大学薬学部の中西教授が学会で発表した論文でも、シクロデキストリンの効果効能を明確にする実験結果が表記されています。ねずみを泳がせての持久力の比較実験。コエンザイムQ10の持久力向上作用は明らかですが、シクロデキストリンに取り込んだコエンザイムQ10を摂取したねずみの遊泳時間の向上はさらにそれを大きく上回る結果となりました。さらにリポ酸のシクロデキストリン包接体を加えた実験結果でも、シクロデキストリンの縁の下の力持ち的な働きをはっきり確認することができました。


水にきれいに分散したコエンザイムQ10のシクロデキストリン包接体。微粒子で分散したコエンザイムQ10包接体は、コエンザイムQ10を少しずつ解き放つことで、体内での高い吸収性を生み出していたのです。研究者を熱くさせているサプリメントとシクロデキストリンの相乗効果。その組み合わせによる可能性は、さらに大きく広がることでしょう。
さらなる効果効能が注目されるシクロデキストリン
寺尾教授が自宅で行った実験で、シクロデキストリンに植物成長促進の効果があることがわかりました。
水のみで育てたピッコロ人参と、シクロデキストリン水溶液を噴射して育てたピッコロ人参。その成長には明らかな差が確認され、シクロデキストリン水溶液を噴射した人参は水のみを与えた人参に比べ成長に改善が見られました。
このことから、シクロデキストリンは自然環境改善に役立つのではないかと期待されています。
寺尾さんがシクロデキストリンの研究を始めたきっかけは、ダイオキシンなどの環境問題が話題になったこと。シクロデキストリンの性質を利用してダイオキシンを除去できないか、と考えたのです。さらに寺尾さんは独自に研究を進め、植物の成長促進にもシクロデキストリンが効果的であることを発見しました。自然から生まれたシクロデキストリンは自然環境改善に役立つのではないかと期待を膨らませます。
αシクロデキストリンが期待されているのは、メタボリックシンドローム改善やダイエット効果。体内に入ったαシクロデキストリンは、腸内で脂肪をバケツの中に取り込みそのまま排泄してくれるのです。からだによくない悪玉コレステロールを増やす飽和脂肪酸は、シクロデキストリンの穴にはまることでそのまま排泄されます。一方、善玉コレステロールを増やす不飽和脂肪酸は穴にはまらず、体内に吸収されるのです。
食生活の欧米化に伴い肉食が多くなった日本人にとって、シクロデキストリンはまるで自分で意思を持つかのようにわれわれの体を浄化してくれます。
シクロデキストリンに情熱を注いできた寺尾さんに、シクロデキストリンに託す未来について聞いてみたところ、その効果は自然環境改善、地球の健康にも役立つ可能性があるといいます。シクロデキストリンは、ときにはサプリメントの強力な補助ロケットときには主役として、無限の可能性を秘めた存在だったのです。











