ペットの健康
ペットは家族の一員です。健康で長生きしてもらうために飼い主として何が出来るでしょうか
ペットは家族の一員です。健康で長生きしてもらうために飼い主として何が出来るでしょうか
仔犬を飼い始めると動物病院や公園などで 、「去勢(避妊)手術をしたほうがいい」と誰か一人くらいには言われる場面があると思います。去勢(避妊)手術に関しては、「やらないと癌になるんでしょ!?」と言ったかなり大雑把な理解をしている方が多いように見受けられますが、それは一部正しくて、一部間違っています。 正しくは、「去勢(避妊)手術をしてなくても、癌に必ずなるわけではないが、しておけば防げる癌もある」ということです。
人間は子供のうちに生殖器を取ってしまうなんて聞いたことありませんね。(病気の予防のためであっても) しかし、人間と違い、ペットとして暮らすようになった動物は、その自然の生理のままに交尾して繁殖する機会を失いました。人間と暮らす動物には、生殖器という器官は、語弊はありますが、「不要」なものになってしまったのです。不要な器官を残すことでさまざまな弊害が生じるようになりました。病気のことだけでなく、発情に伴う動物側の強いストレスと、そのストレスが引き起こす問題行動による 人間側のストレスもあります。
ペットのシニア世代は、老化の個体差も考慮すると、犬では5~8歳、猫では6~8歳を過ぎたころから始まります。小型犬であれば白内障が始ったり、大型犬では関節の病気が始ったりするのもこの時期です。そして、犬猫問わずこの世代から増えるのが「生殖器」の病気です。
シニア世代のペットの疾病の代表的なものは以下です。
オス:睾丸腫瘍、精巣腫瘍(セルトリ細胞腫、ライディヒ細胞腫、セミノーマ)、肛門周囲腺腫、前立腺肥大など
メス:子宮蓄膿症、子宮内膜炎、乳腺腫瘍、乳癌、子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌など
血尿、食欲不振、高熱、元気がないなどを訴えて連れてこられるシニア世代の未去勢、未避妊のペットの診察にあたっては、通常内臓の病気もですが、上記生殖器の病気を必ず除外選択肢に入れています。
去勢(避妊)手術には、単なる病気の予防という観点からのメリット以外にも症状緩和や行動学的なメリットがいくつかあります。
・アレルギー性疾患の症状の緩和
・クッシング(副腎皮質機能亢進症)の症状の緩和
・性格が穏やかになり、吠えなくなる、遠吠えしなくなることがある
・とくに猫で異性を求めて放浪する欲求がおさえられ、交通事故、喧嘩、伝染病の感染の確率が低くなる
・テリトリー意識が軽減し、マーキングの予防になる
・発情期のストレスが軽減される
・無駄な繁殖を阻止できる
などです。
とくにオスの場合は、生殖器の病気の治療方法として「去勢手術」が適用になる場合が多く、また、メスの病気の場合も結局は避妊手術をする場合が多いです。取らないからと言ってなるわけではないなら、病気になってからとればいいのではないかという考えも当然ありますし、それも一理だと思います。ただ、1歳未満の手術と6歳以上の手術では、あらゆる意味でリスクが格段に違うのです。
シニア世代では、皮下脂肪を貯え、麻酔を代謝する肝臓も老化が始っており、また、なによりもその段階で病気を持っての手術になります。術後の回復も若いころよりも遅くなります。早期の去勢(避妊)手術の際は、体力もあり、代謝もよく、また脈管や脂肪が発達していないので手術そのものもやりやすく、あらゆる意味で同じ手術であればリスクは低くて済みます。
それでは、100%去勢(避妊)手術がいいのかといえば、もちろんそんなことはありません。まずは、麻酔は近年ずいぶん安全になったとはいえ、100%安全な全身麻酔はこの世には存在せず血液検査ではわかりかねない体質的な麻酔の事故の可能性はゼロにはなりません。
また、去勢(避妊)手術後は、エネルギー代謝率とホルモンバランスに変動が起こり、若干太りやすくなる傾向があります。(学術的には無関係とされていますが、経験的には明らかに太る子がいるのが事実です。)
以上の通り、去勢(避妊)手術にはメリットもデメリットもあります。 やらないからといって意識が低いわけではありませんし、病気のサインを日常的に見逃さないようにしておけばシニア世代での発症時の対応で十分かもしれません。最終的にはご家族の意向で決められて構わないと思います。ただ、やるのであればなるべく早期の手術をお勧めします。
理由は、たとえば乳がんの発生率は、初シーズン前の手術であればほぼ0%に近くなります。以前は、体の発達する前の早期去勢(避妊)手術には尿道の発達を妨げるなどの発達学的デメリットが指摘されていましたが、近年の研究ではそれらは否定されており、学術的には13~16週齢での去勢(避妊)手術が可能とされています。
アメリカでは早期手術はすでに主流になっており、日本の病院でも早期手術への切り替えは近年進んでいますが、その病院病院で独自に持った経験則などもあるので一概には言えません。時期などについては、信頼のおけるかかりつけの動物病院で相談しましょう。