ペットの健康
ペットは家族の一員です。健康で長生きしてもらうために飼い主として何が出来るでしょうか
ペットは家族の一員です。健康で長生きしてもらうために飼い主として何が出来るでしょうか
現場に居ると時々、「犬猫にも痴呆症があるのか」といった質問を受けます。いままで出来ていた排泄習慣が守れなくなった、夜鳴きをするようになった、性格が変わった、など飼い主さん側が気付く老齢性変化は、たくさんあります。黒かった毛が白髪になったり、歯が抜けたり、毛が薄くなるなど、人間と同様犬猫も「年寄り」様に変化するさまもまた、飼っている者にとっては愛おしいものです。
しかし、ときに、失った機能によって、人間との共生が困難になり(集合住宅での夜鳴きや、マンション内での徘徊、不適切な排泄など)、安楽死を考えるようなケースさえ、あります。
ペットの痴呆は、獣医学的には認知障害症候群(CDS)と呼びます。犬ではヒトの痴呆でよく知られているアルツハイマー型ではなく、脳血管性痴呆が多いといわれています。

夜鳴きや、不適切な排泄など、一緒に生活するにあたって人間に不都合なサインは、わかりやすく、また困るので動物病院に連れてこられるケースの大半を占めます。
しかし、「ボケた、なんとかしてくれ」といって連れ込まれる症例のうち、実は「痴呆」ではない確率は少なくありません。一通りの一般検査を行ってみると、内臓が悪かったり、関節が変形していたり、なんらかの「疾患」が基礎にあり機能が衰えているため、一見「ボケている」ように見える行動になっているだけの場合も、あるのです。
などなど
前述のような基礎疾患の治療をしても改善せず、やはりCDSの診断がついてしまった場合でも、「痴呆には治療がないんでしょ」と悲観的になる必要はありません。前述のとおり、犬の痴呆は脳血管性のものが多く、脳血管の拡張剤や抗血栓剤など、薬物による一定の効果が期待できます。
また、CDSそのものの治療ではなく、遠吠えや徘徊などの、問題行動の減退ないし消失を目的として、鎮静剤や催眠剤の使用の適用ケースもあります。完全治癒までは難しくても、人間との共生を維持できる段階まで、獣医療が手助けできる可能性は、あるのです。
歳を取れば、介護の手が必要になったり、医療費がかさんだりして家族の負担は増えますが、それまで愛犬、愛猫と生きてきた大切な時間を、簡単に手放さず、最後まで全うしてほしいと、願います。

脳血管性の痴呆には、高血圧、糖尿病、動脈硬化などハイリスクとなる要因がいくつかあります。
最近、獣医療でも脂質代謝の検査が可能になりました。10歳を超えたら、血液一般検査に加え、コレステロールや血糖の定期的なモニタリングをすることによって、脳血管障害が起こる前に、予防的治療を始めることが可能です。
また、痴呆になる個体は血中脂肪酸濃度が低いことがわかっており、不飽和脂肪酸を含むサプリメントなどの摂取や、それらを豊富に含む魚類を原料とした処方食の摂取なども痴呆の予防に効果的であると考えられます。
薬物や食事などの摂取だけでなく、脳神経に一定の刺激を与え続けることも大切です。日ごろから頻繁に声をかけ、散歩に出て視覚的な刺激を与え、触ってあげて五感を衰えさせない生活の工夫をしましょう。
