怪しい健康情報の見抜き方

理論と実際が必ずしも一致しないのは、世の常である・・・。
テレビや雑誌のおかげで、今や活性酸素は健康にとって悪者であるということが一般の人に知れ渡るようになりました。そこでしばしば使われる「活性酸素は体をさびつかせる。」という表現は一般の人にもわかりやすい。テレビや雑誌では、体をさび付かせないためには活性酸素を除去する働きのある食品、つまり抗酸化物質を積極的にとればよいといっているのですが・・・。
「体の中で活性酸素が増えるとコレステロールが酸化され、動脈硬化が進行する。」「活性酸素は細胞の遺伝子を傷つけがんを引き起こす。」いずれもよく知られた説です。これらの説が真実であるならば、体の中で活性酸素の発生をおさえたり、活性酸素が発生してもそれをすぐ除去できるようにしたりすれば病気を予防できるということになるのです。確かに活性酸素からの害から身を守るため、もともと体の中にSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)など活性酸素を除去する酵素が備わっています。一方、テレビや雑誌などは、ビタミンE、ビタミンC、βカロチンなどの抗酸化作用のあるサプリメントをとることを推奨しています。
それでは、本当にこれらの抗酸化物質を摂取すれば動脈硬化や癌が予防できるのでしょうか?理論と実際が必ずしも一致しないのは、世の常、医学の世界でもしばしばみられることです。抗酸化物質の疾病予防効果についても、いろいろ研究はあるものの一定の見解が得られていません。むしろ、米国予防医療専門委員会は、喫煙者はβカロチンをサプリメントとして摂取すべきでないと勧告しているくらいです。
「野菜や果物を多く食べる人に癌の発生が少ない。」、「血液中のβカロチン濃度の高い人ほどがんの発生率が少ない。」という研究結果から、βカロチンには癌の予防効果があるのではないかと考えられました。そこで、喫煙者を対象としてβカロチンの肺がん予防効果をみるための研究が行われました。抗酸化作用の効果を際立たせるためには、活性酸素の発生しやすい人たちつまり喫煙者を対象とすればよいからです。ところが、意に反してβカロチンを摂取した人たちの方が肺癌の発生率が上昇してしまった。ちなみに非喫煙者を対象とした臨床研究ではベータカロチンを摂取してもしなくても差がありませんでした。
つい最近も、βカロチン摂取と大腸腺腫再発率の関係をみた研究があります。その結果、非喫煙者ではβカロチンにより腫再発率が低下したが、喫煙者では増加してしまったといいます。
これらの臨床研究の結果を考えると、抗酸化作用を云々するより、禁煙することのほうがはるかに健康への影響力が強いことがわかります。サプリメントをとることが喫煙の免罪符とはなりえないのです。本来マスメディアに求められる情報は、「抗酸化作用の高い○○」と声高に訴えることではなく、喫煙の害を正確に伝えること、どうしたら禁煙できるのかを教えることです。しかし、タバコ会社という有力なスポンサーを失いたくないマスメディアには無理な要求かもしれないですが・・・。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)