怪しい健康情報の見抜き方

エビデンスの前では、大学教授、新米医師、患者も対等なのです・・・。
健康食品の広告では、しばしば医師の推薦のコメントや大学などでの研究結果が紹介されています。素人にとってその道の権威からの情報は大きな影響力を持つようです。専門家の言葉だからと広告内容をそのまま信用してしまいがちですが、ちょっと待っていただきたいのです。
以前、ダイエット用健康食品の広告に医師の虚偽の推薦が掲載され問題になったことがありました。医師のコメント内容が誇張されたり、特定商品を推薦したことがないにもかかわらず推薦者にさせられたりしました(朝日新聞1997年6月3日付)。
最近ある弁護士が、癌に効くと宣伝されている健康食品のひとつアガリクス茸の宣伝本や販売業者のホームページを調べたところ、国立癌センターなどの研究だとしてその効果が過大に宣伝されていたものがありました。弁護士の照会を受けて国立癌センターが研究内容を調べたら、該当する研究はなかったそうです。そこで国立癌センターは、健康食品の誇大広告に消費者が惑わされないよう、インターネット上で注意を呼びかけることにしたといいます。
専門家に言われると、自分で判断することをやめてその言葉を鵜呑みにしてしまいます。私たちは権威に弱い、広告はそのような私たちの弱点をついてくるのです。
現代では様々な分野で専門分化が進み、素人が独自に判断することが難しくなってきています。専門分化した医療の世界でもその道の権威が幅を利かせているのです。患者に対し医師は医療の専門家として絶対であるのと同様、大学教授などその分野の権威は新米医師に対して絶対であるのです。これは豊富な経験と知識が権威を形成する上で必要であったためでしょう。しかし、この傾向は徐々に変化しつつあります。近年、インターネットの普及とともに徐々に医学情報が公開されるようになってきました。すでに患者の中には、自分の病気についてあらかじめインターネットで調べてから医療機関に受診する人もいます。
EBM(根拠に基づく医療)は、科学的データを妄信する医療と誤解されがちですが、本来は患者中心の医療を実践するためのひとつの方法です。EBMで意味するところのエビデンス(科学的根拠)とは臨床疫学的なデータを指します。エビデンスには権威者であろうとなかろうと誰でもアクセスできるのです。エビデンスの前では、大学教授、新米医師ばかりではなく患者も対等なのです。EBMは、医師と患者がエビデンスを共有し、患者が診療に参画することをも含んでいます。今後インターネット上でガイドラインなど様々な医学情報が公開されるようになれば、医師と患者の情報格差はますます縮まり、権威者の影も薄くなっていくことでしょう。さらにEBMの考え方が一般に広まることで、患者であっても医学情報を自ら判断することができるようになれば、専門家のコメントであろうと国立癌センターでの研究データであろうと、権威を利用した広告の効果はなくなってくるに違いありません。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)