怪しい健康情報の見抜き方

情報の本質はどうでもよく、消費者は自身に都合のよい言葉だけ記憶する。
マスコミにある食品が「健康によい」と言われると無条件に受け入れてしまいます。その時、一般の人はそれがどのように健康によいかなど、深く考えることはありません。本当は「健康によい」という言葉の裏にはさまざまな意味があり、人によってはかえって健康によくない場合もあるはずです。
ある糖尿病の患者さんが、「健康によいといわれたので毎日バナナを食べている。」と話してくれました。バナナ、特に夜に焼きバナナを食べると健康によいのだそうです。そこで、「どうして健康によいの?」とたずねたが、その患者さんは答えられませんでした。その人は、なぜ健康によいのかということを考えずに、ただ「健康によい」からと毎日バナナを食べ続けているのです。糖尿病の患者さんがバナナを食べ過ぎればかえって血糖が上昇してしまうかもしれないのですが・・・。
テレビの健康情報番組では、「健康によい」といわれる食品を毎日のように紹介しています。その解説でしばしば登場するキーワードがあります。「抗酸化作用」「コレステロールが減る。」「血液がサラサラになる。」という言葉だ。視聴者はこれらのキーワードが登場すると素直に「健康によい」と考えてしまうらしいようです。
先日見た健康情報番組でも抗酸化作用があるという食品を取り上げていました。例のごとく3人の主婦にその食材を食べてもらい、その前後で血液中のコレステロールを測定しました。するとその食品を食べた後血液中のコレステロールが低下しました。その番組では、その食材の抗酸化作用によりコレステロールが低下したと解説していたのです。
この3つのキーワードは、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の予防効果があるという点で共通しています。悪玉コレステロールであるLDLが低下すれば、動脈硬化性疾患の発症率は低下します。抗酸化物質により酸化LDLが減れば動脈硬化性疾患になる可能性は低くなるかも知れません。(ただし、この点については議論のあるところではあるが。)血液がサラサラになれば、血栓ができにくくなるので、心筋梗塞や脳梗塞の発症予防に役立つでしょう。
しかし、抗酸化作用により直接コレステロールが減るわけではないし、コレステロールが低下するだけで血液がサラサラになるわけでもありません。それぞれの動脈硬化予防効果は別々に働いているのです。したがって、上記のテレビ番組で行われた実験で、その食品を食べた後にコレステロールが下がった原因は、偶然の結果か、あるいはその食品に抗酸化作用とは別にコレステロール低下作用があったかのどちらかです。つまり、そのテレビ番組の解説は誤りといえます。しかし、番組制作者側にとってそのような細かいことはどうでもよいのです。多くの視聴者は細かい解説の内容など忘れて、ただ健康によさそうだということだけ憶えています。したがって、健康情報番組としては、視聴者にその食品が「健康によい」というイメージをもってもらえればよい。「抗酸化作用」「コレステロールが減る。」「血液がサラサラになる。」といった言葉は、科学的な裏づけがあるかのように見せる小道具に過ぎないのです。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)