怪しい健康情報の見抜き方

すべての行為に対する結果が問われる時代になったのはよいことである・・・。
昨年の衆議院選挙はマニフェスト(政権公約)選挙とも言われた。各党が公約に数値目標を掲げて選挙戦を戦ったからです。厚生労働省のつくった健康日本21でも数値目標が掲げられています。最近は目的を達成するために具体的な数値を示すことが多くなりました。数値で示されると、選択の時にも比較しやすくなるし、後日目的が達成されたかどうか確認も容易となるからです。医療を選択したりその効果を判定したりする際にもこの数値目標は役立ちそうです。
健康食品など、体によいといわれるものを取り入れる場合にもそれなりの目的があるはずです。ところが、健康食品を利用している人にその理由を聞くと、「なんとなく健康によさそうだから。」とか「友達に勧められたから。」など、あいまいな回答しか返ってこない。一言に「健康」といってもいろいろな内容を含んでいるし、どのような状態を「よい」とするのか各人により異なるはずです。中には病気の改善、予防などを目的として健康食品を利用する人もいますが、どの程度の効果を想定しているかまで答えられる人はいません。このようなあいまいさが、健康食品などの宣伝広告につけ入られるすきをつくります。
医師が行う医療でもこの「あいまいさ」がつきまといます。医師はそれまでの経験や医学書を頼りに、きっとこの薬を服用すると病気がよくなるだろうと薬を処方します。しかし、どの程度の確率でその病気が改善するかなどあらかじめ予測することはありませんでした。近年注目されているEBM(Evidence Based Medicine、科学的根拠に基づいた医療)は、その薬を服用するとどの程度の確率で病気が改善するかなど、これまであいまいにされていた部分を数値として示し、診療の効果と限界に関する情報を医師と患者とが共有できるようにしました。たとえば、医師はエビデンスに基づいて「高血圧の治療をすると脳卒中のリスクが30%低下しますよ。」と患者に説明することができます。その情報をもとに医師と患者が相談し降圧薬を服用するかどうかを決定すればよいのです。
健康食品などではほとんど臨床研究が行われていないため、予防効果や治療効果を数値で示すことができません。動脈硬化によいといわれる健康食品であっても、何%心筋梗塞の発症を抑制できるかというデータはありません。ということは、以前取り上げたβカロチンのようにかえって有害である可能性もあるのです。健康食品の広告は言葉巧みに消費者がかってに過大な期待を抱くようにつくられています。
私は健康食品などを利用する際にも数値目標が必要であると考えています。健康食品を毎日利用することで具体的にどの程度健康へのメリットがあるのか、利用する前に数値目標を掲げ、それが達成できなければきっぱり中止する勇気も必要です。健康食品にたとえ副作用がないとしても(そうとも限らないのですが。)、それなりの費用をかけるのですから。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)