怪しい健康情報の見抜き方

「人は、自己イメージに好都合なように、信じたいものを信じ、買いたいものを買う」ようです・・・。
「運動せずにあなたの腹筋は洗濯板のようになる!」
このような宣伝文句は問題であると、米国のFTC(連邦取引委員会)はEMSのトップセールスを記録する3社に警告を発した。
EMSは電気刺激を発生し筋肉を収縮させる器械です。医療用のEMSは脳卒中などのため萎縮した筋肉のリハビリに用いられるものですが、商品として一般に出回っているものは筋肉トレーニング用のものです。どうやら肥満解消に効果があるらしいと結構売れています。
確かに日本のテレビ広告でも、確かに腹筋が洗濯板のようになった筋肉隆々とした白人男女が、おなかに大きなベルト(これがEMSである)をつけて笑顔を見せていました。日本でこのような機器が肥満によいと広告してしまうと景品表示法違反となるので、直接的に訴えるものとはなっていないようですが、その広告からは肥満に効果があるかのような印象を受けます。FTCは前述のような記述のほか、「EMSは脂肪を減らす」といった言葉も問題であるとしています。FDA(米国食品医薬品局)によれば、現在のところ体重を減らしたり、腹をへこませたり、腹筋をかっこよくしたりする効果のあるものはないといいます。
私も文献を調べてみたがそのほとんどがリハビリ関連の論文であり、体重を減らしたという研究論文を見つけることはできませんでした。 EMSのテレビ広告では筋肉隆々とした男女が登場します。しかし、彼らは本当にEMSを利用してあのような体を作ったのでしょうか?広告に出てくるEMSの形状からして、腹筋、太ももや腕などならともかく、その他の筋肉をこの器械で鍛えるのは不可能です。彼らはバーベルなどを使った一般的な筋力トレーニングで体を鍛えたに違いありません。
冷静に考えれば、EMSを使っても彼らのような体になれないのは明らかです。情報を正確に伝えようとするならば、EMSによりどれくらいの筋力アップが図れるか、それによりどれくらい体重が減少するのか、どの部分の筋力アップに適しているのか、このような情報を専門家が提供するべきでしょう。恐らくこのような情報は提供できないと思いますが、たとえできても、筋肉隆々とした白人男女がEMSの効果を宣伝するほうがきっと売上は伸びるでしょう。
人は必ずしも理性的に情報を判断しているとは限りません。専門家が理路整然と説明する場合より、美男美女がにこやかにその商品を売り込むほうが売上が伸びることがあります。プラトカニス、アロンソンによれば、「われわれは自己イメージに好都合なように、信じたいものを信じ、そして買いたいものを買う」のだといいます。つまり、私たちは広告されているあのEMSを持つことで、あの広告に出てきている白人男女に自分を重ね合わそうとしているのでしょう。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)