怪しい健康情報の見抜き方

血
液がどの程度サラサラになればどのような疾病リスクがどの程度低減するのかまで教えて欲しいものだ・・・。
テレビでは同じような健康情報を繰り返し放映しているのに、なぜ視聴者は飽きてこないのでしょうか?「某テレビ番組でココアが取り上げられたら、翌日スーパーの棚からココアがなくなるほど売れた。」というエピソードからすでに5年はたっています。にもかかわらず、依然と健康情報番組は花盛りですよね。
見えない疾病リスク、自分で知覚できない疾病リスクを身近な食品で解消できるという、一見科学的な情報を提供しているのが昨今の健康情報番組です。(ただし、ここでいうリスクはあくまでも番組側により選別されたものにすぎないのですが。)その情報を得た視聴者は、身近な食品を摂取することで自分が科学的にも健康によいことをしているという満足感を得る、あるいはリスクに対する不安感を解消する。それは単なるリスク回避行動ではなく、科学的な健康法を実践すること自体が楽しみの一つとなっているようです。それに答えて、健康情報番組は次から次へと新たなリスクとそれに対する身近な科学的解消法を提供します。このような連鎖が今の健康情報番組の隆盛を支えているのです。
健康情報番組の功績(?)のひとつは、目に見えないはずの疾病リスクを見えるかのように表現したことです。そのよい例が「血液サラサラ」という用語です。最近医師の間でもこの「血液サラサラ」という言葉が使われるようになってきましたが、その意味するところは人によって異なります。ある人は血栓予防との関連で、ある人はコレステロールとの関連でこの言葉を使用しているようです。
健康情報番組をしばしば見ている人にはおなじみの、櫛状に並んだ細長い六角形のブロックのスリットを血液が流れる映像、これにより血液中の赤血球変形能、白血球粘着能、血小板凝集能などを総合的にしかも直接目で見ることができるのです。
血液がスリットを流れる様子を見ることで、血液がサラサラなのかドロドロなのか一目瞭然となるのです。きわめてテレビ向きの機器といえます。この映像を利用して、テレビ番組は「血液がドロドロ」だとどうしていけないのかを解説し(リスクの提示)、どのような食品を食べると「血液がサラサラ」になるのか、実際に見せてくれるのです(解決法の提示)。今まで見えなかった、感じることができなかったリスクは、この機器により目に見えるものとなる一方、科学的な裏づけを得たことになります。
人は見えないもの、未知のものに対して不安感を抱く。ところが、たとえ実際に自分で感覚できなくても、数字として示されたり、画像で表されたりすると、ちょっと安心してしまいます。「このままの生活では自分の血液がドロドロになってしまう」という不安は血液がサラサラになるという食事を取ることで解消するかのように感じてしまう。自分の血液はあの番組で紹介された映像のようにサラサラ流れる血液になったのだと夢想するのでしょう。
しかし、健康情報番組では肝心な点が隠蔽されています。測定された血液がどの程度サラサラになればどのような疾病リスクがどの程度低減するのか、実際にはわかっていません。私は、サラサラ映像に関する論文について文献データベースを調べてみましたが、いくつかの基礎的論文しか見つけることはできませんでした。
健康情報番組は一般の人にわかりやすいという理由でサラサラ映像を使ってはいますが、「血液サラサラ」について医学的な共通認識が確立していません。番組に登場する専門家たちはそれぞれ自分の考える「血液サラサラ」を勝手に語っているに過ぎないのです。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)