怪しい健康情報の見抜き方

真実はひとつです。真実の情報提供は医療関係者の責務である・・・。
面白い本を見つけました。 ロバート・L・パーク著「わたしたちはなぜ科学にだまされるのか」という本です。 パーク博士は物理学者であり、米国物理学ワシントン事務局長でもあります。原題は「VOODOO SCIENCE(ブードゥー・サイエンス)」。
私はかつて米国南部のルイジアナ州バトンルージュに住んだことがありますが、その隣の都市、ジャズで有名なニュー・オリンズにはブードゥー教寺院や博物館があります。(行ったことはないですが。)ニュー・オリンズにはブードゥー・ビールという地ビールがあり、私はこの原題を見たときにこのビールの怪しげなラベルを連想しました。
パーク博士に言わせると、ブードゥー・サイエンス(邪悪な科学)とは次の3つをさすといいます。
1)病的科学:科学者が自分で自分をだます科学。
2)ジャンク科学:司法関係者の科学の知識が浅いことにつけこみ、集団訴訟で企業を食い物にする「集団訴訟科学」。
3)ニセ科学:詐欺でカネもうけをたくらむ「詐欺科学」
2)はいかにも米国らしいが、1)や3)は日本でもありそうです。
ブードゥー・サイエンスを唱える彼らの中には自分の考え出した理論を信じて疑わないものもいれば、最初から人をだます目的で宣伝している人までいろいろいます。ただし、彼らに共通することは、きちんとした科学的手順を踏んでその理論を証明しようとしないこと、反論する人たちに全く耳を貸さないことです。科学を装った理論をつぎはぎしてもっともらしい説を唱えているだけなのです。
ブードゥー・サイエンスの問題は、それを考え出した自称科学者にとどまりません。そのインチキを見抜けずに(あるいはインチキと知りながら)、エンターテイメントの材料としてしまうテレビメディア、金儲けのためにそれに投資する企業、国民の人気集めに利用する政治家。彼らがそのブードゥー・サイエンスに関わるため、より膨大な時間と費用が浪費されます。ブードゥー・サイエンスが医学に及べば、人々の健康まで害する可能性があります。
昨今の日本における代替医療ブームの裏に一部ブードゥー・サイエンスの匂いを感じるのは私だけでしょうか?書店などで「○○が治る驚異的な××療法」といった書籍、怪しげな治療法をもっともらしく書いている週刊誌などなど。あるテレビ局は「宇宙パワーで病気を治す」と喧伝した治療師を91年11月から92年12月まで4回にわたって放映し、その出版部はこの治療師の著書まで出したこともありました。
パーク博士は次のように述べています。「もっとも深刻な問題は、一般の人たちをねらってしかけられるブードゥー・サイエンスです。こうした邪悪な科学は、それが本物であるのか、ブードゥーであるのか、見分けがつきにくい。だからこそ、幸運にも科学を一生の仕事として選んだ人間には、ブードゥー・サイエンスについて一般の人たちに情報を与える責務があると、わたしは考えます。」
この「科学」を「医学」にそっくりそのまま入れ替えれば、これはわれわれ医療関係者の責務といえます。私の健康情報も少しは役に立っているのではないかと、この本にはげまされました。
マスメディアの人たちや政治家に是非読んでもらいたい1冊です。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)