怪しい健康情報の見抜き方

どうやらビタミンCは風邪の諸症状には「微妙に?」効果がありそうだ・・・。
約20年ほど前のことです。私はビタミンCにこったことがあるのです。きっかけはライナス・ポーリング博士の「ビタミンCとかぜ、インフルエンザ」という本を読んだことです。彼はその著書の中で、ビタミンCの大量摂取は風邪やインフルエンザの予防や治療に有効であると唱えていました。この本が米国で出版されたとたん、ドラッグストアの棚からビタミンCがあっという間になくなったといいます。ポーリング博士は1954年にノーベル化学賞、1962年に平和賞をもらった著名な化学者であり、浅学の医学生を納得させるにはそれで十分でした。私はしばらくの間ビタミンCを一日1グラム程度とっていたそうです。当時、ビタミンCを手に入れることは今ほど簡単ではなく、ほどなく止めてしまいましたが、今でいう栄養サプリメント利用のはしりであったと自負(?)しています。
しかし、最近出版された「ポーリングの生涯」という本を読みますと、彼はいくつかの過ちを犯していたと考えられます。彼は「体内成分調節医学」を提唱していましたが、これは単なる仮説にすぎませんでした。そして彼はビタミンCが風邪に効くと信じて疑わなかったようです。
ただ、今でも風邪にはビタミンCがよいと唱える人もいるし、市販の風邪薬の中にはビタミンCが配合されているものもあります。本当のところはどうなのでしょうか?ポーリング博士が提唱して以来、数多くの臨床研究がなされました。ここにあるコクラン・ライブラリーという医学データベースの中に、「風邪に対するビタミンCの効果」についてのシステマティック・レビューをみつけることができます。1997年までの臨床研究を検索し、30の研究についてメタ・アナリシスという統計学的手法を用いて分析したものです。これによれば、あらかじめビタミンCを服用していても風邪を予防することはできないと結論されています。そのかわり副作用もなかった。それでも、日頃大量(1グラム以上)のビタミンCをとっていたり、風邪のひきはじめにビタミンCを大量にとった場合、少しは風邪が早く治るという。どれくらい早く治るかについては論文によるばらつきが大きいが、平均すると0.5日程度という。これが長いか短いかについては読者の判断におまかせしたいと思います。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)