怪しい健康情報の見抜き方

マスコミの過剰報道をどこまで信じるべきかの自己責任が問われます・・・。
食べ物の役割は3つあるといわれます。一つは、食べ物本来の役割、栄養素を供給するということです(一次機能)。二つ目は、私たちの五感に訴える役割(二次機能)です。お好きな食べ物を思いうかべてください。その色合い、香り、味、食感。これらがあって始めて食生活が豊かになります。そして最近とみに注目されているのが、病気を予防したり治療を助けたりする役割である(三次機能)。一例として、最近発表されたコホート研究を紹介しましょう。これは、10万人以上の男女を対象に、野菜・果物の摂取量と脳梗塞の発症率の関係を8年から14年間にわたり調べたものです。
この研究によれば、野菜・果物を最も多く食べる人たちは、最も少なく食べる人たちに比べて31%も脳梗塞の発症率が低かったといいます。
食うや食わずの時代では、食べ物は命を維持する栄養の供給源としての役割、つまり一次機能を持っていれば充分でした。しかし、その後生活が豊かになるにつれ、ただ食べるだけでは満足できなくなり、その味、色、香り、食感など、二次機能にこだわるようになりました。これが高じたものがグルメということでしょう。その結果、飽食のつけである生活習慣病がクローズアップされることになりました。
健康志向の高まりの中、病気を予防、治療する食べ物の役割、三次機能に注目が集まってきました。ところが、この食べ物の三次機能に関する研究はまだ始まったばかりで全く不十分なものです。たとえば、一時期食物繊維は大腸癌の予防になると考えられていましたが、最近の9000人近くの女性を対象としたコホート研究では食物繊維を食べても大腸癌の発症率は低下しないと発表されました。ただし食生活の違う日本人にこの研究結果があてはまるとは限りません。この例でもわかるとおり、食べ物の三次機能の評価は難しいのです。にもかかわらず、マスコミはすべてが明らかになっているかのように「ココアが健康によい」などと特定の食品をもてはやします。
このように、特定の食べ物や栄養が薬のように病気や健康に効果があると信じることをフードファディズムといいます。「○○が△△に効く」、「△△は○○でなおる」などのフレーズで、○○に食品名、△△に病名が入っていればこれらはフードファディズムといえます。最初にあげた研究から野菜の効果を算出すると、1年間で10万人あたり、脳梗塞患者は男性でに65.9人から45.5人に、女性で34.5人から23.8人に減ることになるが、これを薬物の効果と同一視する事は問題です。
このように食事と健康の関係が注目される一方で、逆に現代の小児や若者の栄養素の不足が危惧されています。コンビニやファーストフードばかりに頼る食生活や不適切なダイエットのために、栄養のバランスが乱れるばかりでなく、栄養素によっては不足していると指摘されています。この飽食の時代に食べ物の一次機能を見直す必要があろうとは、まことに皮肉な話であります。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)