怪しい健康情報の見抜き方


食べることは我慢したくない。運動もしたくない。だけど痩せたい。生活習慣病を持つ多くの人たちはそう思っています。しかし、「消費エネルギー>摂取エネルギー」とならない限り、痩せることはできない。彼(彼女)らの願望を叶える方法として、栄養素の消化吸収を抑える薬剤や基礎代謝を高める薬剤が考えられます。前者の例として欧米ですでに利用されているリパーゼ阻害剤です。orlistat、後者の例としてはカテコラミンのβ3刺激剤などがあげられます。前者はまだ日本では利用できないし、後者はまだ開発の段階で実用化に至ってはいません。
ダイエット健康食品の成分としてガルシニアと並んで利用されるものにギムネマがあります。これはもともとインドの伝統医学、アーユルベーダで利用されていたハーブです。以前あるテレビ番組では、出演者にギムネマ摂取した後に甘いものを食べてもらうという実験をしていました。ギムネマを摂取した後には甘味を感じなくなることに出演者は皆驚いていたようです。ギムネマには甘味の感覚を麻痺させる成分が含まれているのです。この一見神秘的な作用が「食物の栄養素の吸収を抑え、体重を減らす。」という効果があるかのような印象を与えるのです。
ギムネマの成分であるギムネマ酸には糖の吸収を抑える作用があり、アーユルベーダでは主として糖尿病の治療に用いられているようです。他の基礎研究によれば、ギムネマには膵臓のベータ細胞を増加させたり、インスリン分泌や糖利用を促進する物質が含まれているといいます。もしかするとギムネマは糖尿病に効果があるかもしれません。
実際、ギムネマの抽出物400mg/dayを1型糖尿病や2型糖尿病に投与し、血糖が低下したという報告もあります。ただし、これらは対照試験ではないため、本当に効果があるかどうかについてはまだ何ともいえません。
糖の消化吸収を抑制する効果が強ければ、確かに吸収されるカロリーを減らせるかもしれません。これがギムネマがダイエット健康食品に応用された所以でしょう。しかし、ギムネマが肥満治療に効果があったとする臨床研究は見つけることができませんでした。
糖尿病の治療薬にαグルコシダーゼ阻害薬というものがあります。これは糖の分解酵素を阻害し、糖の吸収を抑制する薬剤です。ある製薬会社のMRから聞いた話によれば、この薬剤は肥満治療薬としても期待されたのだといいます。ところが、この薬剤で一時的に糖の吸収を抑えても長い腸のどこかでやがて糖は吸収されてしまうので、結局身体に吸収されるカロリーは減らなかったといいます。どうも糖の吸収を少しばかりブロックしたところで、肥満を改善させられるほどの効果はなさそうです。αグルコシダーゼ阻害剤であってもこの程度であるから、ギムネマにそれ以上の効果を期待するのは無理かもしれません。むしろギムネマをとると甘味に対する感覚が鈍くなってしまい、かえって甘いものを食べる量が増えてしまうのではないかと私は危惧しているのです。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)