怪しい健康情報の見抜き方


肌の露出度が高くなってくると、にわかに雑誌などでダイエット特集が組まれます。冬の間あまり体重に頓着していなかった人たちは今になって突き出てきたおなかをみつつ、しまったと思うのです。先日の糖尿病学会でも、糖尿病患者で体重増加がみられるのは主に冬の間であると指摘されていました。しまったと思った人たちは、突如ダイエットを決心し、簡単にやせられる方法はないものかと考えます。そこで目に止まるのはダイエットをうたった健康食品です。
昨年の朝日新聞によると、ダイエット健康食品の売れ筋はガルシニアであるといいます。新聞の折り込み広告でも、ガルシニアダイエットとうたったものも多い。実は、他のあやしいダイエット健康食品と違い、ガルシニアにはある程度理論的裏付けがあるのです。
ガルシニアとはGarcinia cambogiaというインド原産の植物であり、この果実の乾燥果皮から抽出されたものがダイエット健康食品に用いられます。この抽出物に含まれるヒドロキシクエン酸はクエン酸に類似した物質で、細胞中のATPクエン酸リアーゼを競合阻害します。本来この酵素はグルコースから生成されたクエン酸から脂肪酸を作る際に必要なので、これが阻害されると脂肪酸合成が低下し、グルコースはグリコーゲン合成に回されることになります。この理論に従えば、ダイエットせずに脂肪が減るというわけで、魅力的な健康食品といえるのです。
1998年、このガルシニアが本当にダイエットに有効であるかどうか、ランダム化比較試験の結果が発表されました。135人の肥満者をガルシニア群(1500mg/日)、プラセボ群に割り付け、低エネルギー食を食べさせ、12週間観察した研究です。しかし、両群にて、体重、体脂肪量に差はなかったといいます。この結果は、その作用機序を考えれば容易に推測できます。ガルシニアの作用は、あくまでもエネルギーの流れを脂肪への流れからグリコーゲンへの流れに変更するだけです。二つの燃料タンクを想定した場合、一方の燃料タンク(脂肪組織)のバルブを閉めて、他方の燃料タンク(肝臓など)へ優先的に燃料を送り込もうというわけです。しかし、いつまでも燃料補給(エネルギー摂取)が続けばいずれその燃料タンクは破綻するに違いありません。燃料補給を減らすか、燃料を消費するか(運動)しない限り、一方の空の燃料タンクににも、そのうち燃料がそそぎ込まれることになります。つまり、最初のうちは脂肪量の減少が期待できるかもしれませんが、それに甘んじてダイエットを怠ればいずれ脂肪が蓄積し出すに違いないということです。思い切り食べながらやせるということは、なかなか難しいものなのです。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)