怪しい健康情報の見抜き方


「気功師○○さんはかつて走行中の新幹線の車中で心臓発作を起こした知人の依頼に応じて、遠隔療法で治療したというド派手な逸話の持ち主です。気は高速をも超越するのか。」とその記者は驚いてみせる。これは外気功による治療を紹介した週刊誌の記事から引用したものです。このような外気功の類、遠く離れたところから患者を治療する、これを欧米ではdistant healing(遠隔ヒーリング)と呼びます。私自身としてはこのような治療に対して懐疑的であるのですが、欧米では代替医療のひとつととらえ、結構大まじめに議論しています。その研究成果の一端が最近発表されました。
この研究は、イボに対するdistant healingの効果を無作為化比較試験(公平さを保つために偽物と本物を投与して正確さを問う試験内容)にて検討したものです。イボは通常の医学では結構治療に時間がかかるものですが、呪いや暗示の類がよく効くという。阪大医学部名誉教授の中川米造氏も自分のイボを自己暗示で治療したというエピソードを紹介しているくらいです。distant healingのような未知なる効果を検証するには格好の対象なのでしょう。
この研究では、イボのあるボランティアを募り、それを無作為に2群に分け、片方にdistant healingを施しています。ボランティアにはどちらの群に属しているかは伝えられていない。10人の経験をつんだdistant healingの施術者は患者の名前や住所、そしてイボの大きさや位置などの情報を教えられ、遠く離れたところから治療をします。6週間の治療を終えたところで、イボの大きさや数を調べ、効果を判定する。残念ながら、distant healingを行ってもイボは小さくなったり、数が減ったりすることはありませんでした。この研究ではdistant healingの効果は否定されたことになります。
この論文と同時期に、distant healingについてのシステマティック・レビューが発表されています。厳密な基準を満たした23のdistant healingの論文(ここでは、手かざし療法(therapeutic touch)なども含まれている。)を検証し、その内13の論文では効果あり、9つの論文で効果なし、1つの論文では逆効果ありとの判定でありました。distant healingの評価は相半ばしているのが現状なのです。したがって、ここで紹介した研究だけではdistant healingを完全に否定することはできないのですが、私はこの論文を読み、さらにこの治療法に懐疑的になったことは確かです。
ただし、この研究に参加したボランティアの大部分は治療群、対照群を問わず、再度この治療を受けたいと回答しているようです。私たち医療関係者はこの事実を無視することはできないようです。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)