怪しい健康情報の見抜き方


「ミミズ酵素っ???」電子メールによる問い合わせが私のところにあったとき、私には何のことかわかりませんでした。インターネットで調べてみると、確かにミミズを原料にした健康食品があることを知りました。
インターネットで見つけたこの健康食品の広告によれば、その有効成分はルンブロキナーゼと呼ばれる物質であるといいます。ルンブロキナーゼを手がかりに文献を調べてみると、これは元宮崎医大生理学教授がミミズから発見した線溶作用を持つ物質であることが分かりました。
彼が大学の動物実験施設の担当となったとき、動物のし尿処理に困り、ミミズによる分解を思いついたそうです。動物のし尿を焼却処分するためには重油が必要であり、それにはコストがかかるからです。ミミズにし尿を分解してもらえば重油代は浮くし、その産物は肥料として再利用可能です。ところが、今度は増殖したミミズの処理に困ってしまったらしいのです。
ミミズは地竜とも言われ、漢方薬でも使われます。きっと何か有効成分が見つかるだろうと研究を重ねた結果、彼はミミズから線溶作用のある物質を発見し、ルンブロキナーゼと命名したのだそうです。しかし、これはミミズから抽出した6種の線溶酵素精製分画の総称であって、アミノ酸組成程度しか分かっていないようです。そのため、健康食品として流通しているものはルンブロキナーゼそのものではなく、ミミズの乾燥粉末をカプセルに詰めたものなのです。
衆議院議員となったことでも知られる帝京大学教授栗本慎一郎氏はミミズ酵素に関する本を書いています。彼はかつて脳梗塞を発症したことがあり、以来この健康食品を利用しているらしいのです。彼はその著作の中で、ルンブロキナーゼは脳梗塞や糖尿病にも効果があると主張しています。ルンブロキナーゼは血栓を溶かすことにより微小循環を改善し、脳梗塞ばかりではなく糖尿病を始めとした種々の内臓の機能回復に効果があるのだといいます。他の健康食品の本と同様、いろいろな病気に効果があるように書かれていますが、よく読むとそれらは仮説の域を出ていません。確かに線溶作用があれば、脳梗塞の予防・治療薬となりうるかも知れませんが、糖尿病にも効くといっては言いすぎなのではないでしょうか?
そこで、ルンブロキナーゼに関する臨床論文がないものか探してみました。ら、ただひとつ中国で行われた脳梗塞に対する一重盲検ランダム化比較試験を見つけました。残念ながら原文を手に入れることができませんでしたが、著者は効果があったと判定しています。しかし、その他の論文は基礎研究論文のみでありました。ルンブロキナーゼを、糖尿病にはもちろん脳梗塞の治療に利用するためには、まだまだ効果や安全性について更なる検証が必要のようです。
ところが、インターネット上の広告の中に、この健康食品が血栓治療剤、糖尿病治療剤として特許を取得しているとの記載を見つけた。どのようなデータをもとに特許を取得したのか、本当に治療剤として臨床的に効果があるのか、私は興味を覚えたので特許広報を調べてみることにした。次回のコラムではその内容を紹介しよう。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)