怪しい健康情報の見抜き方

私のクリニックに両手の杖で支えながらゆっくりゆっくり歩いて通院してくる患者さんがいます。両側とも変形性膝関節症のため、歩行障害をきたしています。もう長年そのような歩き方をしているのであまり苦にしていないらしいが、傍で見ているととても大変そうです。
高齢化社会を迎え、骨粗鬆症や変形性関節症の患者さんが増えてきています。関節の可動制限や関節痛はかなりのADL(日常生活動作)の低下をまねきます。リハビリテーションにより筋力をつけるとか、NSAIDにより痛みをおさえるなどの保存的治療がありますが、いずれも変形性関節症自体を改善させるまでにはいたっていません。今でこそCOX2阻害剤(慢性関節リウマチ治療剤)などが出回ってきましたが、高齢者でのNSAID投与は消化器系の副作用も心配です。
このような状況の中で、変形性関節症に対する健康食品、特にグルコサミンやコンドロイチンが注目されてきています。これらの成分は消化管から吸収され、関節軟骨のプロテオグリカン合成を促進したり、軟骨細胞のRNA合成の亢進、白血球エラスターゼ抑制などの作用があるといわれます。したがって、関節コラーゲンやプロテオグリカンの変性を抑えることができるのではないかと推測されているのです。
グルコサミンとコンドロイチン硫酸の変形性関節症に対する効果については今までにいくつかの臨床研究がありました。特に、2000年にJAMA(アメリカの権威ある医学団体)に発表されたメタアナリシス(複数の研究からのデータを統計学的に分析する最も信憑性の高い臨床データの統計手法)にて有効性が確認されて以来、一部の医師の間でも関心をもたれるようになりました。しかし、大部分の引用された研究には企業がスポンサーとなっていたこと、対象となった患者の詳細が分からないこと、副作用が評価されていないことなどの問題が指摘されていました。目の前の患者さんにこの治療法を適用するためには、副作用の有無、レントゲン上の変化をも観察した長期にわたる大規模な研究が望まれていました。
昨年NIHはグルコサミンとコンドロイチンの変形性膝関節症に対する効果をみる臨床研究では1600人の患者を対象とし、グルコサミン、コンドロイチンそれぞれの効果を正確に図るため、二重盲検で研究する予定だそうです。24週の投与の後、さらに半数の患者で18ヶ月観察します。その結果は2004年に明らかとなるといいます。
上記の研究結果をみてみないと何とも言えませんが、グルコサミンやコンドロイチンに劇的な改善は見込めないとしても、補助的な治療としてなら期待ができるのではないかと思います。しかし、これらが効果的に利用されていくためには解決しなければならない問題もあります。
日本でこの健康食品が適切に利用されるためには、成分表示はもちろんのこと、表示どおりにその成分が含まれているか、余分な成分がないかをチェックする第三者機関も必要だと思います。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)