怪しい健康情報の見抜き方


すでに昨年の11月下旬にはインフルエンザワクチンは品薄となってしまいました。高齢者にインフルエンザワクチンを投与した場合、肺炎の予防効果は56%、死亡率の低下効果は68%とされています。摂取したくても受けられなかった方がいることは残念なことです。現状では、別の方法でインフルエンザを予防する他はありません。
今回のコラムではエキナセア(Echinacea)を取り上げてみました。日本ではなじみのないものですが、欧米ではインフルエンザや風邪に対する民間療法として知られており、いずれ日本でも注目されるのでは、と思っています。
エキナセアは北アメリカに自生する多年生草本で、6種類の固有種があります。ネイティブアメリカンが風邪、歯痛、腹痛、創傷感染の治療などいろいろな病気の治療に利用していたようです。主として利用されているのはEchinacea(E.) purpureaの根や先端部分、花ですが、E.angustifoha、E.pallidaなどの根もエキナセアとして売られています。抗生物質が一般的になる前には、米国において薬草の中ではトップセールスを誇っていたといいます。そのためか、その成分は詳細に調べられており、多くの基礎研究、臨床研究がなされています。基礎実験では、免疫刺激作用があると報告されています。臨床研究でも、二重盲検試験(偽物と本物を飲ませて思い込み効果を排除する試験方法)で、インフルエンザの症状を緩和し、罹病期間を短縮したとの報告もみられます。
しかし、民間療法の分野ではまだインフルエンザについての臨床研究は十分とはいえません。風邪とインフルエンザがきちんと区別されていない可能性もあります。
コクランライブラリーをみても、風邪に対するエキナセアの効果についてのシステマティックレビューはありましたが、インフルエンザに対しては見つけることができませんでした。そのシステマティックレビューでは、エキナセアは風邪に対して効果ありと判定されているのですが、そのあとアメリカで行われたE.purpureaの無作為比較試験では、風邪や上気道炎の予防、治療効果はないと結論されています。どうもインフルエンザに対する効果についても少々疑わしいようです。
実は、これが民間薬の臨床研究の難しいところなのです。きちんと成分がはっきりしており、有効量が決められている西洋薬に比べ、薬草などを使用した民間薬の場合、きちんとした成分や容量の基準、規制がありません。同じエキナセアでも根なのか花を使ったのか、あるいはE.purpureaか他の種なのか、水あるいはアルコールで抽出したのか、成分量はどれくらいか、他の成分が加えられていないかなど、製品によるばらつきがきわめて大きいのです。同様の問題は他のあらゆる民間薬、健康食品についてもいえます。
民間薬が医療として認められるためには越えなければならないハードルがいくつもあるようです。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)