怪しい健康情報の見抜き方

「10代後半から20代前半の女性。ダイエットピルを飲み始めて少し体重が減った、あるいは数ヶ月中断したあと再び飲み始めたある日、頭痛があったがそのまま就寝した。目がさめたときには脳出血をおこしていた。」
健康に何の問題もなかった若い女性が、フェニルプロパノールアミン(PPA)を含むダイエットピルにより脳卒中をおこす、上記がその典型例だといいます。PPAはエフェドリン・アルカロイドの一つであり、米国では1983年より食欲を抑制するOTC薬として出回っています。
論文を公表された研究では、18歳から49歳までの脳出血(くも膜下出血あるいは脳内出血)をおこした702例と性別、年齢などをそろえた対照群1376例と比較しています。ダイエット目的でPPAを服用した女性での脳出血のリスクのオッズ比(いわゆる相対危険度といわれるもので、「A・B2つの因子間で、A因子を持っていない人と比較すると、持っている人は何倍Bになりやすいか?」を表す指標です。)は16.58にのぼるといいます。
早速これを受けて米国FDAはPPAを含む薬剤の全面回収を指示した(3,4)。PPAは日本でも鼻閉の治療薬として市販の風邪薬に含まれている。しかし、先の論文では風邪薬として服用した場合の脳出血のリスクのオッズ比は1.23であることから、今のところ厚生省はPPAの回収を指示してはいない。(ただし、この論文では、風邪薬として服用した場合でも脳出血の危険因子となり得ると結論している。)
同誌はもうひとつ論文も事前に公表している。それは、やはりエフェドリン・アルカロイドの一つである麻黄の副作用についての総説です。麻黄は英名ではEphedraと呼ばれ、日本では生薬の一つとして漢方薬に利用されている。やはりこれも米国ではダイエットピルとして流通している。この論文ではFDAによせられた麻黄の副作用報告140件を分析し、そのうち87例は麻黄に関連した副作用であると考えている。その48%が高血圧などの心血管系の副作用、18%が脳卒中や痙攣などの中枢神経系の副作用であると報告している。しかも、その内10例は死亡しており、13例は後遺症を残しています。
風邪ならば数日の服薬ですむし、それほど大量に飲まれることはありません。しかし、ダイエットピルは長期大量に飲まれる可能性があり、その分リスクは増大する。上記の薬剤両者ともそのリスクに見合うほどのダイエット効果があるとは思えません。
「いずれも米国での話であり、日本ではダイエットピルは流通していないから問題ない。」と考えるのは早計だ。今や、海外のダイエットピルもインターネットや個人輸入、輸入代行などの普及で容易に手に入れることができる。厚生省は、風邪薬に対して問題なしとしているが、日本でもPPAや麻黄を含むダイエットピルは危険だという警告を発するべきです。
コンテンツ提供: 小内亨先生(おない内科クリニック)