マグネシウムは、体内のあらゆる細胞が必要としているミネラルです。
体内のマグネシウム貯蔵のおよそ半分は、体の組織や臓器の細胞内にあり、残り半分は、骨のカルシウムやリンと化合しています。
体内にあるマグネシウムのわずか1%が、血液中に含まれています。
身体は、マグネシウムの血中濃度を一定に保つという大変な作業をしています。
フリーラジカルは、細胞に損傷を与え、心臓血管疾患や癌を発症させる可能性があるのです。
マグネシウムは、体内で起こっている300以上の生化学反応に必要とされます。
マグネシウムは、正常な筋肉や神経機能の維持を助けたり、規則正しい心臓の律動や丈夫な骨を維持します。
また、エネルギー代謝やタンパク質合成にも関わっています。
ホウレンソウなどの緑の野菜はマグネシウムの供給源です。クロロフィル(葉緑素)の中心に、マグネシウムが含まれているからです。
ナッツや種、ホールグレーン(全粒穀物)も、マグネシウムを豊富に含んでいます。
マグネシウムは多くの食品に含まれていますが、通常、含まれている量は少量です。
他のほとんどの栄養素と同じように、マグネシウムの一日の必要量を1つの食品だけで満たすことはできません
一日、5食分の果物や野菜、十分なホールグレーンを含むさまざまな食品を摂取すると、マグネシウムの適正摂取量を満たすことができます。
精製した食品のマグネシウム含有量は、通常、少ないです。
たとえば、全粒小麦粉のパンは、精白小麦粉から作られたパンの2倍のマグネシウムを含んでいます。精白小麦粉を加工する時に、マグネシウムを豊富に含んだ胚芽やふすまが除去されるからです。
マグネシウム供給食品源表を見ればわかるように、マグネシウムを含む食品はたくさんあります。
水はマグネシウムを含んでいますが、水質によって含有量は違います。
硬水は、軟水よりマグネシウムを多く含んでいます。
食事調査は、水からのマグネシウム摂取を評価していないので、マグネシウム摂取の総計やその変数要素が過小評価されることになるかもしれません。
推奨栄養所要量(RDA)は、年齢や男女別におけるほとんど全て(97-98%)の人が必要とする栄養を十分に満たす一日の平均栄養摂取レベルを指します。
| 年齢 | 男性 | 女性 | 妊婦 | 授乳婦 |
|---|---|---|---|---|
| 14‐18歳 | 410 mg | 360 mg | 400 mg | 360 mg |
| 19‐30歳 | 400 mg | 310 mg | 350 mg | 310 mg |
| 31歳以上 | 420 mg | 320 mg | 360 mg | 320 mg |
全国衛生および栄養調査(NHANES III-1988-91)と個人別食品摂取に関する継続調査(1994 CSFII)の2つの全国調査によれば、ほとんどの成人男性と女性の食事は、マグネシウムの推奨摂取量を満たしていません。
また、この調査で、70歳以上の成人は、若い人よりマグネシウム摂取量が少なく、非スペイン系の黒人被験者は、非スペイン系の白人やスペイン系の被験者よりマグネシウム摂取量が少ないことがわかりました。
食事調査によると、多くの米国人は推奨所要量のマグネシウムを摂取していませんが、マグネシウム欠乏症は、米国の成人にはめったに見られません。
マグネシウム欠乏症が起こるのは、通常、尿に過度にマグネシウムが排出されたり、マグネシウム排出や吸収制限につながる胃腸系の障害があったり、マグネシウム摂取量が慢性的に低い時です。
排尿促進剤(利尿剤)やある種の抗生物質、また、シスプラチンなどの癌治療に使う薬剤の使用は、尿中のマグネシウム排出量を増加させます。
糖尿病をしっかり管理していないと、尿中へのマグネシウ排出が増加し、その結果、マグネシウム貯蔵が減少します。
アルコールも、尿中へのマグネシウム排出を増やします。また、多量のアルコール摂取は、マグネシウム欠乏症と関連付けられています。
吸収不良障害などの胃腸疾患は、身体が食品に含まれるマグネシウムを吸収できないため、マグネシウムの減少を引き起こします。
また、慢性あるいは過剰な嘔吐や下痢も、マグネシウム減少を引き起こす可能性があります
マグネシウム欠乏症の症状には、意識傷害、見当識障害、食欲不振、うつ、筋肉の収縮、痙攣、ひりひりする痛み、痺れ、異常な心臓の律動、冠動脈痙縮、発作があります。
さまざまな食品を摂取する人は、一般に、マグネシウムサプリメントを摂取する必要はありません。
マグネシウムのサプリメント摂取は、通常、特定の病気や症状が、過度のマグネシウム損失を引き起こしたり、マグネシウム吸収を制限するときに指示されます。
尿中に過度のマグネシウムが排出したり、慢性的な吸収不良、重度の下痢や脂肪性下痢、慢性もしくは重度の嘔吐を起こしている人には、マグネシウム補給が必要かもしれません。
ラシックス、ブメックス、エデクリン、ヒドロクロロチアジドなどのループやチアシド排尿促進剤は、尿中のマグネシウム排出を増やします。
また、癌治療に広く使われているシスプラチン(10)やゲンタマイシン、アムホテリシン、シクロスポリンなどの抗生物質の服用も、腎臓に通常より多いマグネシウムを尿中に排出させます。
医者は、こうした薬剤を服用する人のマグネシウムレベルを定期的に調べ、もし、欠乏症を疑えば、マグネシウムサプリメントを処方します。
糖尿病の管理をしっかりしていないと、尿中へのマグネシウム排出が増え、マグネシウムの必要量が増えるかもしれません。
医者は、このような場合、マグネシウム補給が必要かどうかを判断するでしょう。
糖尿病の管理がしっかりしている人には、マグネシウムの定期的な補給は指示されません。
飲酒癖のある人は、マグネシウム欠乏症の危険性が高くなります。アルコールは、尿中へのマグネシウム排出を増やすからです。
マグネシウムの血中濃度の低下は、アルコール依存症の人の30‐60%、また、アルコール中毒の禁断症状を経験している患者の90%近くに起こります。
さらに、アルコールを食品の代わりに摂取する人は、通常、マグネシウムの摂取が低くなります。
医者は、こうした人々のマグネシウム補給の必要性を定期的に調べています。
通常、腸の手術や腸感染症の後、下痢や脂肪の吸収不良でマグネシウムを失います。しかし、クローン病やグルテン過敏症による腸疾患、腸カタルなどの慢性的な吸収不良疾患の場合にも、マグネシウムの損失は起こります。
こうした症状を持つ人は、マグネシウム補給が必要かもしれません。
脂肪の吸収不良あるいは脂肪性下痢の最も一般的な症状として、脂っこい我慢できない臭いの便が出ます。
たまの嘔吐は、過度にマグネシウムを損失させることはありませんが、頻繁に激しい嘔吐があると、サプリメントを必要とするほどマグネシウムの損失を引き起こすかもしれません。
この場合、医者は、マグネシウムサプリメントが必要かどうかを判断するでしょう。
慢性的にカリウムやカルシウムの血中濃度が低い人は、マグネシウム欠乏症の危険性が内在しているかもしれません。
食事にマグネシウムサプリメントを加えると、カリウムやカルシウムの補完がより効果的になるかもしれません。
医者は、カリウムやカルシウムレベルが正常でない時は、マグネシウムの栄養状態を調べ、もし必要なら、マグネシウムサプリメントを処方します。
医者は、マグネシウム欠乏症が疑われたら、どんなときでもマグネシウムの血中濃度を測定します。
マグネシウムが中程度に減少している時は、食品からマグネシウム摂取を増やすと、血中濃度を正常に戻す助けになります。
アメリカ人のための食事ガイドラインや食品ガイドピラミッド、また一日5回プログラムで推奨されているように、一日に最低5食分の果物や野菜を食べたり、濃い緑の葉菜を頻繁に食事に取り入れると、マグネシウム欠乏症になる危険性が高い成人にとってマグネシウムの推奨所要量を摂取する助けになるでしょう。
マグネシウムの血中濃度が非常に低い場合、血中濃度を正常に戻すには、点滴が必要かもしれません。
この場合、マグネシウムの錠剤が処方されるかもしれませんが、形状によっては、特にマグネシウム塩は、下痢を起こす可能性があります。
主治医や資格を持った医療関係者は、マグネシウム補給が必要な場合、一番いい補給法を推奨するでしょう。
マグネシウムと血圧
マグネシウムは、血圧を整えるという重要な役割を担っている可能性があることが立証されています。
カリウムやマグネシウムを豊富に含む果物や野菜をふんだんに取り入れた食事は、常に低い血圧と関連付けられています。
DASH研究(高血圧を防ぐ食事療法)によると、高い血圧は、マグネシウムやカリウム、カルシウムが豊富で塩分や脂肪分が低い食事によって大幅に下がっています。
別の研究では、高血圧の発症に対するさまざまな栄養素の効果について、3万人以上の男性の医療専門家を対象に調査されました。
4年にわたる追跡検査の結果、マグネシウムの多めの摂取は、高血圧の危険性を大幅に低下させていることがわかりました。
そうした立証は強い説得力を持っており、高血圧の予防・発見・検査・治療に関する全国合同委員会は、高血圧の予防や管理のために、ライフスタイルの積極的な改善策として適正なマグネシウム摂取の維持を推奨しています。
マグネシウム欠乏症は、心臓発作や心臓麻痺の原因になるかもしれない代謝の変化を引き起こします。
また、体内のマグネシウム貯蔵が低いと、心臓の律動が異常になる危険性が高まることが立証されています。これは、心臓発作と関係のある合併症の危険性を高める可能性があります。
人口調査によると、マグネシウムの血中濃度が高いと冠動脈性心疾患の危険性が低くなっています。
さらに、食事調査によると、マグネシウムの摂取が多いと、心臓発作の危険性が低くなっています。
食事からのマグネシウム摂取とマグネシウムの栄養状態を示す症状、そして心臓病という3つの複雑な関係を理解するには、さらなる研究が必要です。
マグネシウム欠乏症は、閉経後に発症する骨粗しょう症の危険因子である可能性があります。
これは、マグネシウム欠乏症が、カルシウム代謝やカルシウムを整えるホルモンを変化させるという事実によるものかもしれません。
マグネシウムの補完は、骨のミネラル濃度を高めるかもしれないと示唆する研究もありますが、研究者は、骨の代謝や骨粗しょう症におけるマグネシウムの役割をさらに調査する必要があるとしています。
マグネシウムは、炭水化物の代謝に不可欠です。
マグネシウムは、血液のグルコースレベルの調整を助けるホルモンであるインシュリンの放出や働きに影響を与える可能性があります。
血液のグルコースレベルが高いと、尿中へのマグネシウム排出が増加し、その結果、マグネシウムの血中濃度が低くなります。
マグネシウムの血中濃度が低い状態(過小マグネシウム)が、糖尿病の1型と2型に見られるのも、このことから説明できます。
1992年、米国糖尿病協会は合意声明を発表し、次のように締めくくっています。「食事からの適正なマグネシウム摂取は、米国糖尿病協会が推奨している栄養的にバランスのとれた食事プランに従えば、たいてい満たされます」。
また、「過小マグネシウムの危険性が高い糖尿病の患者のみ、全体の血清マグネシウムを調べてもらうべきです。そして過小マグネシウムの可能性がある場合のみ、マグネシウムを補給されるべきです」とアドバイスしています。
健康な食事作りについてさらに情報が欲しい場合は、アメリカ人のための食事ガイドラインや食品ガイドピラミッドを参照してください
食事から摂取したマグネシウムは、健康に害を及ぼしませんが、下剤に含まれている可能性のあるマグネシウムのサプリメントを多量に摂取すると、下痢などの副作用を促すことがあります。
マグネシウム中毒は、腎臓の機能不全とよく関連づけられます。これは、腎臓が多すぎるマグネシウムを除去する働きを失った時に起こります。
また、下剤を多量に服用すると、腎臓が正常に機能していても、マグネシウム中毒になる可能性があります。
高齢者はマグネシウム中毒になる危険性があります。理由は、年を取ると腎臓の機能が低下し、また高齢者は、他の年代よりマグネシウムが含まれた下剤や制酸剤をよく服用すると思われるからです。
マグネシウムを過度に摂取した場合の症状は、マグネシウム欠乏症に似ており、精神状態の変化や、吐き気、下痢、食欲減退、筋力の低下、呼吸困難、極端に低い血圧、不整脈などを引き起こします。
国立科学アカデミーの医学研究所は、青少年と成人に対するマグネシウム補完の許容上限摂取量(UL)を一日350ミリグラムに設定しました。
摂取量がULを超えると、副作用の危険性が高まります。
| 食品 | 含有量(mg) | %DV ※ |
|---|---|---|
| 100%ぬか、2テーブルスプーン | ||
| フロリダ産アボカド、Mサイズ1/2個 | ||
| きつね色に焼いた小麦の胚芽 | ||
| ローストした乾燥アーモンド、約28g | ||
| 小麦を細切りにしたシリアル、長方形のビスケット型2個 | ||
| かぼちゃの種、約14g | ||
| ローストした乾燥カシューナッツ、約28g | ||
| ローストした乾燥ナッツ、ミックスしたもの、約28g | ||
| 調理したホウレンソウ、1/2カップ | ||
| ぬかフレーク、1/2カップ | ||
| インスタントの強化オート麦シリアル、水で調理済、1カップ | ||
| 皮付き焼きジャガイモ、Mサイズ一個 | ||
| 調理した大豆、1/2カップ | ||
| ローストした乾燥ピーナツ、約28g | ||
| ピーナツバター、2テーブルスプーン | ||
| チョコレートバー、約40g | ||
| ベジタリアンベークドビーンズ、1/2カップ | ||
| 皮なし焼きジャガイモ、Mサイズ一個 | ||
| カリフォルニア産アボカド、Mサイズ1/2個 | ||
| 調理したレンズマメ、1/2カップ | ||
| 生のバナナ、Mサイズ一個 | ||
| さまざまな種類のエビ、生、約84g、大12匹 | ||
| 練りごま、2テーブルスプーン | ||
| 種無し、ゴールデンレーズン、1/2カップ、パック入 | ||
| ココアパウダー、無糖、1テーブルスプーン | ||
| 全粒小麦のパン、1切れ | ||
| 生のホウレンソウ、1カップ | ||
| 生のキゥーイ、Mサイズ一個 | ||
| ホムス:水煮したヒヨコマメを裏ごしして調味したペースト、2テーブルスプーン | ||
| 刻んで茹でたブロッコリ、1/2カップ |
※ DV = 一日の所要量。DVは推奨栄養所要量(RDA)に基づいた参考数値です。この数値は、食品が特定の栄養を豊富に含んでいるかどうかを消費者が判断する際に役立つように開発されました。マグネシウムのDVは、400ミリグラムです。食品ラベルの栄養成分表示に記載された%DVは、一食分の食品がDVの何%を含んでいるか示しています。%DVが低い食品も、健康的な食事になります。)
この概況報告書は、ミッドランド州べセスダの国立衛生研究所(NIH)ワレングラントマグヌソン臨床センターの臨床栄養サービスが、NIH局長室のサプリメント局(ODS)との協力で開発しました。
ODSの任務は、サプリメントの知識や理解を深めるために、科学的な情報を評価し、また、リサーチを奨励、支援したり、リサーチ結果を普及させて公衆を教育することです。そうすることで、アメリカ人に生活の質や健康の向上を促していきます。
臨床栄養サービスとODSは、この概況報告書で論じた情報が科学的に正確であることを確実なものとした科学評論の専門家に、感謝の意を表します。