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低インシュリンダイエットって効果があるの!?
怪しい健康情報の見抜き方
低インシュリンダイエット

先日書店に行ったところ、「低インシュリンダイエット」というタイトルを冠した何種類もの本が平積みになっているのに気がつきました。どうも最近は低インシュリンダイエットがブームらしいです。早速、その中で理論が詳しく書かれていそうな本を選んで読んでみることにしました。
冒頭から「低インシュリンダイエットは食事制限をするのではなく食事の質を変えるだけなので辛い食事制限はありません。」と書かれています。「辛い食事制限がいらない。」というのは、ダイエット本の常套句です。とたんに私の猜疑心が頭をもたげてきました。
低インシュリンダイエットの理論はおおよそ以下のとおりです。食事はその内容により血糖の上がり方が異なります。血糖の上がりやすい食事をとるとそれを下げようとインシュリンというホルモンがどんどん分泌されてしまいます。インシュリンが出すぎると、このホルモンによる作用のため脂肪がたまりやすくなります。したがって、血糖の上がりにくい食事をとれば体重が減るというわけです。ここでGI(GlycemicIndex)という指標が出てきます。
GIはそれぞれの食品がブドウ糖(あるいは白パン)と比較してどれくらい血糖が上がりやすいかを数値化したものです。数値が低いほど血糖が上がりにくい。同書の理論に従えば、GIの低い食品ほど、血糖値があがりにくく、インシュリン分泌も抑えられるため脂肪が蓄積にくいということになります。
GIはすでに1981年に発表された指標であり、糖尿病患者ではGI値の低い食品の方が食後の血糖が低下すると報告されている(2)。ただし、食後のインスリン必要量を決めるのは食事中の炭水化物量であって、GIではありません。一時的に血糖が上昇したからそれが脂肪となるのではなく、過剰量の炭水化物や油が体の脂肪となると考えた方が妥当です。ポテトチップ(GI値60、554kcal/100g)を食べた方がゆでたジャガイモに塩をかけて食べる(GI値90、76kcal/100g)よりやせられるとはとうてい思えません。しかも、同書のGIの算出方法にも疑問が残ります。本来、GIは食品摂取後2~3時間の間の血糖曲線下面積を比較します。ところが、同書では食後30分の血糖値のみから算出しています。過去に発表されているデータと同書に示された数値は微妙に異なりますし、なぜか小麦粉などそのままではどうみても食べられないような食品のGI値まで掲載されています。ちなみに上記の()内は同書に掲載されているGI値、カロリーです。
それでも低インシュリンダイエットで体重は減るのだということを言いたければ、低GI食が同じカロリーの高GI食より体重減少効果があることを証明する研究データが必要であるでしょう。しかし、残念ながらこのようなデータは同書のどこを探しても見つかりませんでした。その代わりにこの低インシュリンダイエットを実践して体重が減ったという体験者が登場します。それはどうしてなのでしょうか?
同書に掲載されている食事のレシピをみるとそのからくりは明らかです。そのレシピでは、明らかに油脂(GIは低いはずなのに)は減らされているし、食事のボリュームを増やすために野菜(GIは確かに低いが、カロリーも低い)が多用されています。GIの高い精米よりGIの低い玄米は歯ごたえがあり、食事に時間がかかるため、満腹感が得られやすいのです。同書で紹介されているレシピは一般的な肥満の食事療法の原則(摂取カロリー<消費カロリー)をはずしているわけではありません。確実に摂取カロリーは減らされているのです。インシュリンやGI値などの言葉を使って奇をてらってはいるが、両者はこのダイエット法の主役ではないのです。
今までいろいろなダイエット法が流行しましたが、それらはただアピールがうまかっただけです。ごくあたりまえのカロリー制限、運動の推奨だけでは注目を集めることは難しい。一般の人に関心を持ってもらうには、「低インシュリンダイエット」という命名やGIの利用といった、魅力的な治療法とみられるような仕掛けが必要なのです。
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